★★★









…やばっ。

スマホをコートに入れていたから、気付かなかったけども。



忠晴からの着信、あり得ないぐらいきてる…!

LINEも『今どちらですか?』の連発。



まずいまずい。怒られる…!



軽くずーんと落ち込み、スマホを再びポケットにしまった。




「…そろそろ行くか」



なずなの涙も落ち着いたところで、この地下の部屋を出ることにした。

当の本人は、うつむきがちに無言で頷いている。

涙で腫らした目が真っ赤で、可哀想な感じだが。



可哀想なんだけど…。



…その顔が可愛く思えてしまうのは、何故か。



事情が事情なだけに。

キュンとするんだよ、普段強気な女のメソ顔…!

ギャップ萌えというやつでしょうか。



また、頭なでなでして。

ギュッってしたい…!



…いえ。いえいえ。

そんなことしてたら、いつまでも地上に上がれなくなるだろが。

それに、二度目は痴漢。



…だなんてことを、頭の中でいやらしーく考えながら、前に一歩踏み出すが。



「…伶士」



着ていたコートの袖を、キュッと引っ張られる。