魔法陣の中に入ってくる雷帝を…沙羅先輩は、何故か羨望の眼差しで見つめている。
円らでキラキラと輝いた瞳で。
雷帝と目が合うと、浅く頭を下げている。
雷帝にはスルーされていたが。
…その時、何故か思ってしまった。
沙羅先輩。
何か、幸せそうだ…。
それは、まるで。
恋愛に心を踊らす、少女のように。
変なの…これから、死が待ってるのに。
雷帝を出迎えた魔法陣は、再び電光を放つ。
今までにないぐらいの威力だ。
同時に風も巻き起こり、白い光をも放ち、視界が奪われる。
「…バーカ。死ね」
…えっ?!
先ほどのような、穏やかな口調とはまるで正反対の菩提さんのダークな声が聞こえて、ハッと目を開ける。
「ボス、雷帝がいなくなった途端、悪口言うなんて…」
「懐の小さい男だよ。人間相手にムキになるなんて。死ねばいいんだ」
え…菩提さん、そんなキャラだったんですか?
しかし、ようやく視界が開けたその向こうには。
魔法陣も消え去り、沙羅先輩や雷帝の姿はなく。
沙羅先輩が情事で使ったベッドだけが、残されていた。



