雷帝のラリってキマった眼は、菩提さんを捉えていた。
しかし、そんな『圧』を掛けられているにも関わらず、菩提さんは至って普通にいつもの柔らかいオーラを出しているけど。
『おまえ…《冥王》のところの』
「…よく、ご存知ですね。なら話は早い。その娘から手を離して頂けませんか?」
『…何?』
「貴方の目的である取り引きは達成されているはずです。こんなところで油を売らなくても」
『………』
すると、雷帝は。
なずなから手を離した。
スルッと滑り落ちるように、なずなは地に落ちる。
拘束を逃れた途端、ゴホゴホと咳き込んでいた。
命の危機を脱したことに、一瞬であるがホッとする。
『…おまえ、名は何と?』
雷帝は、菩提さんを視界に捉えて尋ねる。
しかし、菩提さんは依然としてその不敵な笑み、表情を崩さない。
「だから、名乗るほどの者ではございません。縁があれば、またお会い出来るかと。…戦場で」
『…フン』
そんなやり取りの後、雷帝は再びマントを翻す。
沙羅先輩や、仲間の鳥人間たちのいる魔法陣へと戻っていった。



