柔らかく、穏やかな口調が背中の方から聞こえてくる。
コツンとブーツのソールを鳴らす音と共に。
『…何だと?』
その物申しには、さすがの雷帝も反応したようだ。
チラッとこっちを振り返る。
血走った眼を目にしては、怯みそうになるが。
「…人間の小娘相手に、貴方も大人気ないですね?仮にも魔界のNo.2ともあろう御方が」
『何奴!』
フフッと不敵な笑いを漏らしていた。
「名乗るほどの者ではございません…」
しかし、俺には。
背後から現れた人物が、誰だかわかった。
その穏やかで不敵な口調の主が。
恐る恐る振り返ってみると…やはり、そうだ。
「貴方の手の中にいる小娘の、家族です。すみませんが、その手を離しては頂けないでしょうか」
なずなの上司。
菩提さんだ…!
よく見ると、その後ろには…事務所の社員である、あのもさっとした男(名前忘れた)も、もさっと立っている。
更にその後ろには、やんすマルコメもいた。
「音宮の若と、ちょうどそこで出くわしたんで、連れてきたでやんすよ!」
だから…雷帝を前に喋るな!



