「ダメだ。伶士はあんたを抱かない」



その時、俺と沙羅先輩の間に入り込むようにゆっくりと歩いてきたのは、なずな。

俺を背に庇うように向け、腕を組んで沙羅先輩を鋭い眼光で見つめている。



「な、なずなっ…」



なんか、庇ってもらってる感があって、複雑だ。

…私の男に手を出すな感もあるけど、なずなに限って、それは恐ろしい程無い。

さりげに残酷物語。切なっ。



「あら、どうして?久々に伶士に抱いてもらいたかったのに」

「それをする必要は…もう、ない」

「あら、どうして?」



すると、なずなは沙羅先輩の足元を指差す。

そこは、先ほどからパチパチッと音を立てる、魔法陣。




「魔力の充填の許容が、もう上限に達している」

「え?」

「…そろそろお迎えが来るはずだ。もう男に抱かれなくていい」

「えー?残念だわ?」

「………」



沙羅先輩、本当にしょんぼりしている。

本当に残念そうだ。

根っからのエロ…まさしく、その言葉の通りだわ。

彼女の目の前にいるなずな、顔がチベットスナギツネのように、無になってる…。