(うっ…)



沙羅先輩が笑い掛けてくる。

その円らで潤んでいる瞳を見ていると、神経が侵されたかのように、動けなくなってしまう。

それはまるで、本能のように。



「…伶士、大きくなったね?」

「は…」

「なんか、男らしくなったね。大人になった」

「………」



そうか…沙羅先輩の卒業以来だから、もう三年も経つ。

沙羅先輩は全然変わってないけど…。



「…そうだ。伶士、北桜辞めたんですってね?」

「…え?何でそれを?」



沙羅先輩は、もう一回フフッと笑う。



「伶士は、純粋で素直で繊細だものね。敏感に学園の『闇』を感じ取ったのでしょう…?」

「や…み?」

「まあ、それは私達のせいでもあるのだけどね…」

何だ…?



話の解釈が出来ず、ただ立ち尽くしていると、「まあいいわ」と沙羅先輩がベッドから降り立つ。

とたんに魔法陣がビリビリッと音を立てた。

しかし、沙羅先輩はそれに動じることなく、ベッドの傍に立ったまま、俺の方に手を差し出す。



「積もる話もあるから…伶士、おいで?」