★★★








「伶士、来て…?」




(やばいやばいやばい…)




ダメだ。

その声を耳にしてはいけない。

目を見てもいけない。



透き通ったその声を聞くと、脳内が侵されてしまう。

そして、沙羅先輩といたあの頃を思い出してしまいそうになるんだ。



欲望を貪り続けたあの快感と。

罪悪感を。

それに溺れた惨めな自分を。



最初は…好きだと思っていた。

恋だとすら思ってたさ。



でも、それは違っていた。

俺も、彼女の前では、ただ欲望に溺れる…獣。



そう確信してしまうと、自分が何をやっているのかわからなくなってしまう。



だから、沙羅先輩には会いたくなかった。

なのに…。




「伶士、早くおいで…?」



何でだよ…!






「…早く来いっつってるぞ?」

「い、行きません!」



木嶋さんに肘でツンツンと突かれるが、そこは断固として拒否だ。

こんな大勢のギャラリーの中で、抱ける?

冗談じゃない!

それに…。



そんな中でも、気になって様子を伺ってしまう。

なずなの反応を。