踵に拳銃の柄が当たり、斎藤さんの手から跳ね上がった拳銃は、弧を描いて飛んでいき、地面を掠りながら向こうの方角に落ちていく。



静けさが訪れると、我に返った。



うまいこといった…!

全て、うまいこといった…!



冷静になると、恐ろしくなる。

どんだけ自分、アグレッシブだったんだろう…!



拳銃を俺の蹴りで取り上げられた長身スーツ姿の斎藤さんは、痛めた右手を抱えて舌打ちをする。



「…おまえ、いったい何なんだ!」

「…た、ただの空手少年だ!」

「はぁ?」



だって、本当にそうだもん。

呆れた声出されても…。



するとそこで、店のドアが突然ガバッと開き、そこに注目せざるを得なくなる。

反射でバッと顔を向けてしまった。



「…おい!何やってる!…騒がしいぞ!」



店から顔を出したのは。

キレイ目でオシャレな細身の黒スーツを着た、おじさんだった。

いい歳いってそうだが、細身でスレンダー。

まるで、ダンディズムな。



「こっち大変なのに、ガタガタ暴れてんじゃねえ!…何なんだ!」

「…木嶋!」