俺のボディガードは陰陽師。~第二幕・幸福論~


そうか…酔っぱらいの仕業ではなく、やはり、その『魔力』とやらの仕業。

だよな。

こんな壁ガーッ傷付ける輩がいたら、気付くはずだっつーの。

それほど大胆な傷だ。



すると、なずなは神妙な顔で呟く。



「…ここ、オデットの階上なんだよね」



先ほどの被害の店の真上…ってことか?

それは、偶然ではない…だろうな。



「ひょっとしたら!…行こう、伶士」

「ああ!」



マスターに頭を下げて、店を出る。

「…あ、ビルのオーナーには事情を説明しときますんで、修理業者呼んでも大丈夫です」と、一言付け加えて。

マスターは「あ?…あ、そ?」と大して気にもしない返答をするが。



しかし、勢いで店を出た後。

またしてもジロッと見られる。



「…この先、ホントに来んの?」



また、それか。



「おまえが『行こう』言ったんじゃねえかよ。行く」

「………」



再び、不信な目で見られ、無言で先を行かれる。

何だよ。まだ帰れとか思ってんのか。

勢いで『行こう』言ったくせによ。

天丼やらかしてるのは自分だっつーの。



…でも、『行こう』の一言は、嬉しかったりした。