柱には、赤い天狗のお面が掛けられていて。
天狗の左目の辺りがスパッと縦に割られている。…いや、裂かれていると言った方が正しいか。
「これ…」
そして…ゾッとしたのが。
その天狗のお面の切り口の延長のように、柱に斬り傷が長く延びている。
ざっと50センチほと。
スパッと鋭い刃物で抉ったかのように。
「うーん。これさっき気付いたんだよ。昨日の開店前にはなかったはず。まあ、昨日結構お客さん来て騒がしかったから、誰か酔っ払った勢いでやっちゃったかなー?って思って」
「………」
マスターは「あはは」と呑気に笑っている。
やっちゃったかなー?って…。
いくら酔っ払っていたとはいえ、これ、物損もんでしょ?
壁にガーッと傷ついてんだよ?
笑って済ませられるあなた、懐広い。
それに、俺的にはこのレトロな雰囲気のスナックに、なぜ天狗のお面?って、ツッコミたいけど。
「………」
なずなは、その天狗のお面と斬り傷を厳しい表情でじっと見つめている。
「これ…ビンゴだよ」
「えっ?」
「…微量に障気を感じる。これも『流れ弾』だ」



