それから俺達は、階段でもうひとつ上の五階のフロアへと上がる。
ここには、テナントが三つ。
手前から一件ずつ、片っ端からお店を回る。
もう、手当たり次第のローラー作戦。
木の割れるような音、しませんでしたか。
モノ、壊れてないですか。
壁やドアに傷、ありませんか。
他、不可思議な現象ありませんでしたか。
「…えー?壊れたモノ?ないと思うけど…そんなことより最近、このビルにたくさんヤクザが出入りしてるのが恐いんだけど」
「木の割れるような音?…うーん、うち、スナックだし、カラオケの音大きいからわからないわー」
俺達の質問に、どのテナントの人もちゃんと答えてくれるが、これといった情報は得られず。
しかし、五階での最後のテナントであるおじさんが経営するスナックを訪ねた時の話だった。
「壊れたモノ?…あー、こんなものとかもありかい?」
恰幅のいいおじさん、もといマスターが、昔ながらの古びた木目調の店内フロアを案内してくれる。
指差したのは、柱の方だ。
「…あっ!」
思わず声をあげてしまった。



