俺のボディガードは陰陽師。~第二幕・幸福論~



…沙羅先輩に惚れ込んでいたかというと。

恐らく、そうではない。



ただの欲を満たすだけの相手、だったと思う。



確かに沙羅先輩は、誰もが憧れる『妖精』のような絶世の美女だったが。

俺は、その仮面の下に潜んでいた獣の狂気を知っている。

当時はわかっていなかったが、それを恐ろしいと感じたのは、自分に本当に好きな人が出来てからの話だった。



思い出したところで、昔を懐かしんで微笑むことの出来る思い出ではない。

だから余計、思い出してしまったことに自己嫌悪する。

ああぁぁ…。




そんな自分にガッカリしながら、忠晴の作ってくれた弁当を黙々と食べる。

颯太や陣内らの話を聞きながら、弁当も食べ終わった頃。

頃合いを見計らったかのように、美森が「おっつー!」と、俺達の輪の中にやってきた。



「おー。何だおまえわ」

颯太がテンション低めに牛乳を啜って美森をチラッと見る。

「弁当終わりましたか!」

「終わっとる終わっとる」

「実はさー。颯太と伶士にお願いがあって…」



美森、元気だな。