★★★










ーーーあの日、俺は。

人間という生き物は、別の生き物の皮を被って生きることもある。

そんなことを知った。





『ねえ、兄貴…どこ行くの?』





本当の自分を見せないようにしているのか、それが当たり前なのか、気付かないだけなのか。



もしくは…そんなつもりはなく。

周りが勝手にそう思っただけなのか。





『…伶士も中学生になったんだから、やることは経験しておかなきゃな?』



ホテルの綺麗に手入れされた廊下を、俺より少し前を歩く兄貴は、少し笑って見せる。



中等部に進学して数ヶ月経った初夏の頃。

放課後、突然兄貴に誘われる。



どこに行くの?



そう問うと、兄貴は『うーん…』と、言葉を探す。



『そうだなー。大人になりに行くって感じ?』

『は?』



よく分からないまま、言われるがままに着いていった場所は、とある駅前のホテルだった。

エントランスにて、北桜の制服を着た女子生徒二人と合流したのは、同じ中等部の三年生。