母さんはそのなずな作のブラウニーを持って、俺のところにやってくる。

袋から取り出し、ひとつつまんで「はい、あーん」と俺の顔の前にブラウニーを差し出していた。

ショックで放心のあまり、母さんのペースに乗せられ思わず口を開けてしまった。



ブラウニーが口に放り込まれて、反射でそれをボリボリと咀嚼する。



「美味しい?なずなさんの味!」

「うん…」



すきな人が作った親父宛てのバレンタインお菓子を。

母さんにあーんしてもらう、俺。



いったい何だろう…。



も一度、ずーんと落ち込む。



…でも、これがいつかは。

親父や忠晴と違うものが貰えるようになるかは、自分次第。



橘伶士、16歳。

道程は獣道なのでありました…。












★★★★★★mission3 eNd★★★★★★★