★★★








(…あれ?)



依然、高級ステーキ屋でなずなと会食中ですが。



(………)



俺の皿、ふと見ると。

付け合わせの人参のグラッセが、三つから五つに増えている…。



これは…どうしたもんか。



向かいのヤツをチラッと見る。

可愛らしく、ニコニコで高級ヒレステーキを堪能中ではあるが。



ヤツの皿、チラッと見ると。

人参のグラッセはひとつしかなかった。



これって…。

…いつの間に!



「…おい」



ヤツは一瞬固まる。



「………」

「なずな」

「…肉汁ブシャー!うまー」



俺の呼び掛けなど聞こえてないフリをしているのか、こっちには見向きもせずに肉を味わっていた。

ヤロウ。白々しい。

隠すつもりがあるのか無いのか不明なリアクションだ。

やれやれ。



そして、シカトするヤツの反応なんて構わず、問いかける。



「おまえ、俺の皿に自分の人参乗せただろ」

「………」



口に肉を頬張ったまま、シラッとした目で俺を見ていた。

そして、肉をごくんと飲み込み、その第一声が。



「知らんがな」



…なんてヤツ!