「でも、いざ現場に来たら…想像していたより危険な妖気で、ちょっとヤバいヤマになるかな、なんて。案の定、まさかの魔族だったけど…」
そこで、なずなはまたため息をつく。
ちょっとマジな雰囲気で話してるので、俺はただ黙って聞くしかなかった。
「…もし、伶士を連れて行ってたら、伶士を危険な目に合わせたかもしれない。…だから、連れてこなくて良かったって思ったんだよ」
「………」
「…先の件で、恐い思いさせてるのに、これ以上危険な目に合わせるワケにいかないからな」
それは…。
なずななりの、思いやりで。
俺のことを考えてこその、発言だった。
なのに、俺は…。
《連れてこなくて良かったとか、断られて良かったとか、俺いったい何なワケ?!》
また、だっせぇ発言を…!
冷静になってしまうと、こっ恥ずかしいことをしている自分に気付いてしまった。
俺、カッとなっていたとはいえ、なんて女々しいことを…!
私と仕事、どっち大事なのー?っていう、男が困りまくる発言と同じレベル…!
男の風上にもおけない…!
気付けば、残酷物語は始まっていた。



