「あっ。起きたの」
すると、そこへ竜堂の見送りに行ったなずなが戻ってきた。
美森の目が覚めたことに気付いたようだ。
なずなの登場に「な、なずぽよ!」と、ビックリしている。
「えーと…アンミカさんだっけ」
「安中ですー!あんなか!」
美森は挙動不審気味にキョロキョロと辺りを見回す。
何かを探してる?
そして、俺を手招きして耳打ちしてきた。
「…あのイケメン、帰ったの?」
「あ、うん。さっき」
「………」
そして、しばらく沈黙したのち、美森はまた耳打ちしてくる。
「…じゃあ、私が帰れば二人きりになれるワケだ」
「は?」
「私、帰るわ。ファイト伶士!じゃ!…え、そうだ、はいこれ!」
「え…え?え?はぁ?…あ、おい!」
手に持っていた紙袋から、チョコをひとつ手渡される。
さっき俺が個人的に買った、ナッツのチョコだ…。
そして、この女も撤収が早い。
たーっと走って立ち去ろうとする。
なずなにもペコッと頭を下げていた。



