俺のボディガードは陰陽師。~第二幕・幸福論~

飛び付くように、その入り口を潜って走って中に入っていく。

その後を呆れながら着いていくんだけど。

…美森は元々、本命チョコを選びに来ていたんだ。

思う存分買ってくれ。



さて、俺は…。



辺りをぐるっと見回す。

しかし、ここでも違和感を肌で感じてしまう。



何か…この会場。

天井、どんよりとしている。

うまく言えないけど…嫌な感じ。



しかし、地上はどのテナントにも、ショーケースを覗くカップル、お会計に並んでいるカップル。

お買い上げ商品の袋をぶら下げて歩くカップル、ウキウキしながら手を繋いで歩くカップル…。

カップル、カップル…カップルだらけだ。



なずなとあのイケボヤローの姿は、見えない。



ボーッとしながら、その人だらけの華やかな会場を漠然と見回していた。



(………)



…何でだろう。



何故か、俺の心の中には、先ほどのような執念が沸き上がってこない。

そこにいるはずだったのは俺だったのに!とか、二人を追いかけてやろうだとか、散々気になっていたはずなのに。

今は、不思議とその『嫉妬心』とやらが、胸中から消え去っていたのだった。