話の途中で、なずなが急に無言になっていた。

あれ?どうした?



「なずな!…おい!聞いてんの?」



返答がなく、焦ってその名前を呼ぶが。

無言になった電話の向こうでは、物音と話し声が微かに聞こえていた。



『おっ!なずじゃねえの!来てたのか!』

『…え?え?何で?…いつ帰ってきたの?』

『へへっ。昨日』



そこから聞こえたのは、なずなの声だけではない。

声優のようなやたらと色気のある男性のセクシーでキレイな声がした。

イケボだ…!



なずなの傍に、男がいる…?

イケボの男…!



急に背筋がザワザワとしてくる。



「…な、なずな!おい!なずな!」



何度か呼び掛けると『…あ、はいはいごめん』とようやく電話に応答した。



『ごめんごめん。突然久々な人登場してさー?』

「それより明日っ」

『…あ、ごめん。伶士が予定アリなら仕方ないわ。他当たる。ごめんごめん。じゃ』

「いや、そうじゃなくてっ」



話の最中だが、通話が一方的にブツッと切られた。



あ…。



ツーツーと不通話音が寂しく響いていた。