怒りなのか、悲しみなのか、何だ?この伝わらないもどかしいやり場のない感覚は…!



「なずな、おまえぇぇっ!」

「…てなわけで、ごちそーさん?」



怒りをぶつけようとしたが、なずなにまたしてもデコをつんと突つかれ、その勢いを殺される。

ニッと笑いかけられ、舌をペロッと出していた。



なっ…!



そして、俺に背を向けて手を振る。



「じゃあ、おつかれー」



そして、背中を見せたまま、手を振りながら俺を置いてその場から離れていく。



「…あ、ちょっと!」


しかし、そんな俺を無視して、店員の咲哉さんとカウンター越しに話をしていた。



「咲哉くん、ごちそーさま!帰るねー」

「え?なずちゃん帰るの?今日は完オフじゃなかったっけ?」

「うん、ちょっと用事できた。これから風祭んとこ行ってくる」

「風祭さん?」

「うん、じゃあねー!」



そして、俺の方には振り返らず。

ヤツはさっさと店を出ていった。



「………」



客のいない店内は、騒がしかったヤツがいなくなると急にシーンとなる。

そこで一人、取り残される俺…。