「あ、はい…なずなは」

「なずちゃんならランチ中だよー」



咲哉さんの指差した方向は、先ほどのテーブル席。

そこにはランチの皿を目の前に、箸を持ったままのなずながこっちをじっと見ていた。



まだいた…。

よかった…。



なずなの姿を見て、体の力がどっと一気に抜けたような気がする。

安堵8割。



「…帰ってきたの」



先ほどのテーブル席へ赴くと、なずながそうボソッと呟く。

俺の方は見ずに、目の前のランチを黙々と食べていた。



「あのゲロマドンナと一緒に帰ったかと思った」

「はぁ?…帰るワケねーだろ」



その一言にちょっとムッとする。

俺、そんなひどいヤツに見えるのか?

だとしたら、心外だ。

っつーか、ゲロマドンナって何?

ゲロとマドンナ?

どう考えても侮蔑の言葉っぽいが…。

…って、なんてことをいうんだ。



「ふーん…そ」

「………」



そ…。

一文字で済んでしまった…。

そ…。



心の中で苦笑いしながら、再びコートを脱ぐ。

なずなの真ん前の席に腰かけると、そのランチの全貌が目に入った。



「…何食ってんの」

「ハンバーグ。見りゃわかるだろ」

「………」

うっ…塩だな。