「あ、そうだ…ごめん。私…」

「いいんだ。俺が何とかするから。薫は先帰ってて」

「ごめんね?伶士…ありがとう」



いや、本当にいいんだ。大丈夫。

元はと言えば…俺がなずなに会うための口実で、薫を利用して軽い気持ちで連れてった。

というのにも、罪悪感が少なからずあって。

だから、悪霊騒ぎの嘘を口実に俺に近付いた薫のことも、そんなに怒れない…。



…それに、そこには俺が戻りたいんだ。

特別な人が待ってる、場所だから。





それから、間もなく薫の迎えの車が来る。

見送ろうと思って、薫が車に乗り込もうとするのを見守っていたが。



「…あ、伶士」



薫は何故か、車には乗らず俺の方へとやってくる。


「どうした?」



そして、薫は突然。

突拍子もないことを、俺に告げる。



「伶士…彼女いないなら、私にもまだチャンスあるよね?復縁チャンス…」

「えっ…!」



驚いて声をあげてしまった俺に、薫はフフッと笑う。



「…過去をやり直す必要がないなら、新しい『今から』を始めたい」

「え、え…?」