そういえば、去年の今ごろ――




梅雨前線は遠のいたのに早速雨が降った憂鬱な日。



昼休みにケイちゃんとじゃんけんをして負けたせいで、渡り廊下の奥にある自販機まで飲み物を買いに行ったことがあった。


渡り廊下は屋根があるけど側面に防壁はないから雨風が当たって寒いし、自販機まで遠いしでグチグチひとりで文句を言ってたっけ。



そこでこの苦味の強いお茶とケイちゃんリクエストのトマトジュースを買い、そそくさと校舎に戻ろうとしたとき。



自販機の影に誰かが隠れていた。

雨の日に購買じゃなくわざわざこっちまで来る物好きがいるとは。


興味本位で覗いてみれば、男の子がうずくまっていた。



上履きの色が同じ……ということは同じ1年?


足に顔をうずめていて誰かは判断つかないけれど、具合いが悪いのだろうか。



『……あのー』



おそるおそる声をかけてみればあからさまに怯えられた。


怖がってるのか、嫌われてるのか。


思わず『ごめんなさい』と謝りながら
持っていたお茶を近くに置いた。



『その……よければどうぞ。わたしの好みで申し訳ないですけど。お、お大事に』



薬とかのほうがよかったかな。でも持ってないししょうがないよね。あとで保健室の先生を呼んでこよう。



一応ぺこりと頭を下げてその場をあとにした。


ちょっといいことしたかも。ありがた迷惑的なことだったかも。教室に戻りながらそんなことをぐるぐる考えていた。




まるであのときあげたお茶が帰ってきたみたい。