2人をなだめながら廊下に出る。
右にリョクくん、左にケイちゃん。
真ん中はひどく窮屈に感じる。
居づらないな。
おとといまでは一番気楽だったのが、今となってはふしぎでならない。
生徒でごった返す購買につくと、リョクくんはわたしの分も買ってくると言って争奪戦に参戦していった。
ケイちゃんも意気込んで端っこのほうから攻めていく。
「……はあ、」
また胃が痛くなってきた。食欲ない。
2人は心からわたしを案じてくれてるけれど、ちっとも安心できない。
ひとりにさせてほしい。
そう思う自分が、やだ。
わたしはいつまで何も気づいていないフリをするんだろう。
「……まだ顔色悪いね」
「っ、へ?」
購買から少し離れた場所でじっと待っていると、上から影が落ちてきた。
顔を上げれば、記憶に新しい美形が近くにあった。条件反射でしりぞく。
ケイちゃんの好きな人。
図書室のマッシュくん。
名前……何くんだっけ。
んんっと……あ、そうそう、ノブ。ノブくん。
「ど、どうも……」
「どーも。体調平気?」
この質問、今日で何回目だろう。
「うーん、微妙」
あ。しまった。
大丈夫の一言で済ませればよかった。
なんで本当のこと答えちゃったんだろう。
「はい」
「え?」
「お大事に」
さらっと何かを手渡して、何ごともなかったかのように去っていった。
な、何だったんだ……。
手元に残ったのは、冷たいペットボトル。
「お茶だ……」
苦いやつだ。わたしの好きなやつ。
あっさりしすぎてて、お礼を言うのを忘れてしまった。



