観察八日目。男は少女が亡くなっているのを確認した。上層部の話だと七日目の夜には既に死んでいたらしい。
男の所属する機関によって若い命が失われてしまった。しかし、男は何とも思わない。命の灯火が消えることに慣れてしまったのだ。
人生の三分の一は睡眠が占めている。だから、
「その三分の一の時間を有効活用すれば、もっとより良い人生を歩めるのではないか。」
と男の所属する機関は考え、新薬を発明することになったのだ。
一週間前の少女と行った取引は、十年前から男の所属する機関で行われている実験で十代の少年少女を対象にしている。この実験で「人はどのくらい寝なくても生きていられるのか」というサンプルを調べているのだ。そして、男の所属する機関は、そのサンプルを基に「寝なくても健全に生活できる薬」の開発を行っている。実験で大勢の人に役立つなら、多少の犠牲は仕方なかった。
今日も、男は新たな観察対象の所へと向かっていった。