今日は、卒業式の前日。



あのころみたいに男子の制服を着て、みんなと卒業パーティーをするんだ。


私が今通っている晴山女子高校の前で、愛しい人を待っている。



タッタッタッと足音がして、あの頃よりも背が少し伸びて、体つきも少しがっしりした爽がやってきた。


濃紺のブレザーとスラックス、中の白いシャツにターコイズブルーのネクタイという懐かしい姿に目を細める。



爽と会うときは私服が多かったから、制服姿は久しぶりだ。



「男装したみこ、久しぶり。」


「ふふっ、僕に似合ってるでしょ?」


「ああ。髪の毛は長いけど。」


「伸ばしたからね。とりあえず早く行こう!みんな待ってるんでしょ?」


「うん。首を長くして待ってるよ。行こうか。」




爽の手を握って、ゆっくり歩き出す。


大好きで愛しいひと、自分が笑顔でいられるひと。



そんな人に出会えるのは、まるで奇跡みたいなできごと。



お母さんはよくそう言ってたっけ。



まさにその通りだよね。



みんなに出会えた奇跡、爽と恋人になれた奇跡。



それは、ちょっとでも違う要素があれば起こらなかった奇跡かもしれない。



だから、この奇跡を噛み締めて、日々過ごしていく。



お母さんは、空から見てて。





私の想いに頷くように、春の温かい風が、ふわりと吹いた。




Boys in girl【完】