自分が方向音痴だってことをすっかり忘れてた。

前にショッピングモールでも迷子になったからね。


奏音が絶対怒ってるよ・・・。



『バカみこ!方向音痴だって忘れんな!!探すの大変だからな!!』



はわあ!奏音の般若みたいな顔と説教が想像できてしまう〜!!



えっと、まずは小説の棚を見つけよう。

私が唯一行ったことがある棚だから、そこからなんとなく入り口まで行けるはず!



そう思って歩き出した私の背後で、何かの気配がした。

前に寮のスーパーで感じた、怨恨の念に満ちた視線。
それがねっとりと絡みついてくる。



背後に気をとられていたから、気づかなかった。

前から、近づいて来た人がいたことに。



「?!んー!はふへへー!」


「ちょっと黙って貰おうか?未来音ちゃん?」



ふわりと鼻腔を掠めた、甘い匂い。



それを嗅いだ瞬間、私の意識は暗転した。



助けて・・・爽・・・。