体中の力が奪われたようにフラっと立ち上がり、俺は教室を後にした。
廊下に出たとたん、ワラワラと囲まれちゃった。
たくさんの女の子たちに。
急いでアイドルスマイルを浮かべたけれど
男子から俺に向けた嫌みな声が耳に入り、ズンと心が沈む。
「あいつ、アイドルなんだろ?」
「女みたいなことしてて、恥ずかしくないのかねぇ?」
「どうせ女子にモテたいから、アイドルやってんだろうな。動機クソだな。アハハハ~」
わかっているよ。
俺は男子から、好かれていないって。
今までだって何度も何度も、心無い言葉を浴び続けてきたから。
チクチク。
痛みだした心をごまかさなきゃ。
その場をしのぐための笑顔を、なんとか作っていると
「お前らさ、陰でコソコソ他人をけなして恥ずかしくねえの?」
低くて凛とした声が、廊下に響いた。
誰?
俺をかばってくれたのは。
低い声の残音をたどるように、顔をあげる。
そこには、恋のライバルが立っていた。
珀斗くんが、俺をかばってくれたってこと?