この講堂は、私のお父さんとお母さんの思い出の場所。


実家で暮らしていた頃は

『高校の時に、講堂で二人だけでお弁当を食べた』とか

『お母さんの回し蹴りを、お父さんがバク転で避けた』とか

両親の高校時代のラブラブ話を、聞かされまくったっけ。

愛情表現が甘ったるすぎな、お父さんの口から。


講堂に足を踏み入れるだけで、両親の微笑みあう姿が浮かび上がってしまうのはそのせい。

大嫌いなお父さんとお母さんの顔なんて、一瞬でも思い出したくないのに……



これ以上この場にいたら、胸が押しつぶされそう。

早く逃げなきゃ!

心臓への負荷がえぐくて、足早にドアに向かってみたものの

ギィィィィー

いきなり、出ようと思っていた講堂のドアが開いた。