雅くんに
なんて答えていいかわからない。
顔をあげる勇気すら出てこない。
ただ思うことは
今すぐこの部屋から出て行って欲しい。
私の前になんて
二度と現れないで欲しい。
私は机の引き出しに
大事にしまってあった
ピンクのストップウォッチを手に取ると、
雅くんに背を向けたまま差し出した。
「これって……」
「持って帰って」
「え?」
「このお守り、もう見たくないから」
雅くんは私の手から
ストップウォッチを受け取ると
弱々しい声を出した。
「明梨ちゃんが握ってるその手紙……
大事なの?」
大事だよ。ずっごく大事。
今の私はこの手紙がないと
どうやって闇から抜け出していいかさえ
わからないんだから。
机をじっと見つめたまま
私はコクリと頷いた。
「俺が捨ててってお願いしたら
捨ててくれる?」
「…………嫌」
「そうなんだね」
私を見限ったような、重暗い雅くんの声。
なんでこの手紙を捨てて欲しいの?
雅くんはもう
私のことなんてどうでもいいんじゃ
ないの?
あ、そういうことか。
この手紙を読んで
私がまた司会をしたいなんて思ったら
困るんだね。
私がこの先、司会を続けていたら、
雅くんと私が
仕事で一緒になるかもしれないもんね。
翠さんだって、嫌がるよね。
「雅くん、安心して」
「え?」
「もう私、マイクで喋ることは
一生しないから」



