学校が終わり、いつものように(はく)ちゃんに家まで送ってもらった。


「珀ちゃん、また明日ね」


「おう」



珀ちゃんが見えなくなるまで、笑顔で手を振ったけど。

いつも通りでいられたのは、ここまで。


うまく呼吸ができない。

体から飛び出してしまいそうなほど、激しく動く心臓に追い立てられちゃってるから。



あ~もう、ダメだ! 

平穏な心じゃいられない!

自分の部屋まで猛ダッシュ!


と、いきたいところだったけど……


明梨(あかり)、お帰り!」


今一番会いたくない人に、引き留められてしまった。



「た…ただいま……(こい)ちゃん」


「どうした? 顔が真っ赤だけど」



恋ちゃん、鋭すぎ!! 

ニヤニヤ顔で、私のことを見つめているし!!



「もしかして、珀斗っちと何かあった?」


へ?


「珀ちゃんとなんて、何にもないよ」


「それはかわいそうに。珀斗っちが……」

 

更にニヤニヤを増し、私を覗き込む恋ちゃん。

なんで珀ちゃんが、かわいそうなの?



今のうちに、さささと階段を上がっちゃおうって思ったのに。

さすが恋ちゃんだぁ。

私を簡単には、自由にしてくれない。