学校ではみんなに
 情けない姿を見せられなくて、
 アイドル笑顔を振りまくようには
 しているけど。

 気を抜くとすぐに
 しぼんだ風船みたいに
 頼りない顔になってしまう。


 今も帰りの支度の手を止め
 ボーっと窓の外を眺めていると

 「雅くん、元気ないね」
 「お仕事大変?」と声をかけられた。


 女の子たちの声にハッとして
 「大丈夫だよ」となんとか作った笑顔。


 そんな情けい幼馴染に
 「明日のライブ、不安なんだよな?
  振付変わったから」と
 すかさず綾星からのフォローが入った。


 最近はこのパターンばっかり。
 俺が情けないモードに入るたびに
 綾星がごまかしてくれる。

 本当に感謝しきれないな。
 幼馴染には。


 幼馴染かぁ……
 明梨ちゃんと珀斗くんもだよ……


 ふと思い浮かんだNGワードが
 再び俺の心を海に投げ落とした時

 「雅、あれ」
 綾星の長い指が
 窓の外の校門を指さした。


 すごい人だかり。
 女子が群がってる。


 って…… 
 あの中心にいるの……

 珀斗くん??


 どうして……
 珀斗くんが俺の高校に?



「雅に会いに来たんじゃねえの?」


 心の声、ダダ漏れですよと
 言わんばかりの綾星のにんまり顔。


「なんで、俺に?」


「例えば……
 俺の明梨を取るんじゃねえとか」


 俺だけに聞こえるように
 耳元で囁いた綾星の冗談交じりの声に
 弱々しく反論。


「別れたし……」


「知ってる」


 綾星のその緩いニヤケ顔
 ムカっときたんだけど。