へたれアイドル卒業します アミュ恋1曲目

☆雅side☆

 俺……
 必要なかったかも……


 マイクで締めの言葉を述べた
 明梨ちゃんが、
 涙をぬぐいながら
 ステージ袖にはけるのが見えた。


 だから心配で心配で。
 俺が明梨ちゃんを慰めてあげたくて。

 俺を囲んでいたファンの子達から
 何とか抜け出して、
 ステージ袖に来たのに……


 明梨ちゃん、楽しそうに笑ってる。
 珀斗くんとじゃれ合うように……


「明梨……ちゃん……」


 のどからやっと絞り出てきたような
 途切れ声に、
 明梨ちゃんはハッと驚いたように
 俺を見た。


 そして何かをごまかすように、
 掴んでいた珀斗くんの手を振り払った。


「おう!雅じゃん! ライブお疲れ!」


 いつもより明らかにテンション高めの
 珀斗くんの声が、
 余計に俺の心を締め付ける。


 そりゃ、珀斗くんも
 機嫌が良いはずだよね。

 ステージ袖の段ボールの陰に隠れて、
 明梨ちゃんと2人で
 いちゃついているんだから。


 珀斗くんだけにしか見せない
 心を許したような明梨ちゃんの
 無邪気な笑顔が、
 俺の頭にべったりと
 こびりついて離れない。


 珀斗くんの手首を掴んで。
 あんな近い距離で笑いあって。


 俺との距離より、明らかに近いよね。
 珀斗くんとの距離の方が。