「負けって……何?」


「カッコよさ」


 え?
 
 カッコよさって……
 珀ちゃんに勝てるわけないよ。


 いつも女の子たちに
 キャーキャー言われて。
 誰の前でも堂々としていて。
 男らしくて。


「珀ちゃんの方がカッコいいじゃん」


「は? それ、俺に告ってんの?」


 ニヤニヤ顔の珀ちゃんに
 あわてて反論。


「ち……違うよ……」


「だよな。
 さっき桃華さんから聞いたから……
 お前と雅が、うまくいったって……」


 さっきまで余裕のある笑みを
 浮かべていたのに。
 180度表情がひっくり返った珀ちゃん。


 辛そうに唇を噛みしめる珀ちゃんに
 私は謝ることしかできない。


「……ごめん」


「あ~!もう!
 明梨にそんな顔させるために
 お前んとこ来たわけじゃねえし!」


 珀ちゃんは頭をかきながら
 強めに言葉を吐き捨てた。


 そしてまた
 輝きを放ったような笑顔を私に向けた。

 
「ステージに立つお前
 すっげーカッコよかった」


「……ありがとう」


「見ててすっげー悔しくなったし。
 明梨に俺が負けるなんて
 プライド的に許せねえ。マジで。」


「負けとかないじゃん」


「は? 勝者の余裕見せてんじゃねえよ」


 だから
 勝ったとか負けたとか
 そういうのないじゃん。


「明梨、覚えとけよ」


「え?」


「お前は俺のライバルだからな。
 俺はぜってぇ
 TODOMEKI歴代最強の総長になる。
 強さでも、精神面でも。
 ダントツ1位目指すから。
 お前は、司会の道、突っ走れよ」