へたれアイドル卒業します アミュ恋1曲目


近づいてきた明梨ちゃんが、俺の前で止まった。

ドキドキを悟られたくない。

恥ずかしさで、俺は顔をあげられない。


でも……

大好きな明梨ちゃんの顔を、瞳に映したくてたまらない欲求もこみあげてきて……


両方の想いがぶつかり合い。

明梨ちゃんを堪能したい、瞳の願望が勝利。

下唇を噛みしめながら、俺はゆっくりと目線を上げる。

明梨ちゃんは、怯える小動物みたいに肩を震わせながら必死に立っていた。

今にも泣きだしそうな瞳で、地面をじっと見つめている。


無言の時間が流れ。

途切れ途切れのオドオド声が、俺の耳に届いた。



「やってもいいの……?アミュレットの司会……私なんかが……」


強く握りしめられた明梨ちゃんの拳が、小刻みに震えている。


まだステージでマイクを持つ恐怖を、拭い去れていないんでしょ?

本当は怖くて怖くて、しかたがないんじゃないの?


「ムリしてない?」


俺の言葉に、明梨ちゃんは何も答えない。

心の奥の何かと一人で戦っているかのように顔をゆがめ、唇をかみしめている。