近づいてきた明梨ちゃんが、俺の前で止まった。
ドキドキを悟られたくない。
恥ずかしさで、俺は顔をあげられない。
でも……
大好きな明梨ちゃんの顔を、瞳に映したくてたまらない欲求もこみあげてきて……
両方の想いがぶつかり合い。
明梨ちゃんを堪能したい、瞳の願望が勝利。
下唇を噛みしめながら、俺はゆっくりと目線を上げる。
明梨ちゃんは、怯える小動物みたいに肩を震わせながら必死に立っていた。
今にも泣きだしそうな瞳で、地面をじっと見つめている。
無言の時間が流れ。
途切れ途切れのオドオド声が、俺の耳に届いた。
「やってもいいの……?アミュレットの司会……私なんかが……」
強く握りしめられた明梨ちゃんの拳が、小刻みに震えている。
まだステージでマイクを持つ恐怖を、拭い去れていないんでしょ?
本当は怖くて怖くて、しかたがないんじゃないの?
「ムリしてない?」
俺の言葉に、明梨ちゃんは何も答えない。
心の奥の何かと一人で戦っているかのように顔をゆがめ、唇をかみしめている。



