「いつの間にか、春輝くん達のトークが終わっちゃったわね」
ということは……
今から、雅くんのピアノソロ?!
聞きたくない。
絶対に聞きたくない。
翠さんへの想いが詰まった、ラブソングなんて。
「そろそろ行くね。お母さんはゆっくり見て行けば」
「だから、逃げるなって言ったでしょ?」
またそれ?
初めからやり直すつもり?
私とお母さんのやり取りを。
「明梨、雅くんの歌を聴きなさい」
「……イヤ」
「あっそ。じゃあ、捕獲するから」
はい?
捕獲って……私は虫じゃないよ。
カブトムシやクワガタを連想して、ぶるっと震えが走る。
いきなり後ろから、お母さんに羽交い絞めにされた。
捕獲って、娘の私のことだったの?



