「次、雅の番な」
現場監督並みにリハーサルの指揮をとる綾星が、俺を呼びに来た。
次は俺のピアノソロか。
ピアノの前に座り、気分をあげたくて講堂を見回した。
明梨ちゃんと二人だけでお弁当食べた思い出が、手に届かないほど遠くでキラキラと光っている。
楽しかったな。
チョコが乗っかったご飯、食べたっけ。
胸のキュンキュンが止まらなかったな。
レジャーシートの上。
手を伸ばしたら抱きしめられるくらい近くで、明梨ちゃんが俺だけに笑ってくれて。
リハーサルが自分の番だってわかってる。
それなのに。
俺の頭の中を支配しているのが、全部明梨ちゃんってことになんか笑えてくる。