「俺がオマエのこと、こんだけ想ってるって。今まで気づかなかったわけ?」


「……ごめん」


「明梨、俺の顔見て」



微笑んでいるの?

そう思えるほどの優しい声が、私の耳に降ってきた。

予想外の声に顔をあげる。

口元を緩めて穏やかに微笑む珀ちゃんの顔がすぐ近くにあって、ドクンと心臓が飛び跳ねた。


そんな優しい瞳で見つめないで。

私、流されそうになっちゃうから。


珀ちゃんを選べば、雅くんと翠さんに嫉妬してばかりの苦しい日々から逃げ出せるのかも。

そう……思っちゃうから……



「明梨のこと、マジで雅に渡したくねぇ」


だからお願い。

そんな甘い言葉、今の私にささやかないで。


私のことを想ってくれているのがわかる、珀ちゃんの熱い瞳。

その瞳から逃れるように、私はその場にしゃがみ込んだ。



「珀ちゃん……ごめんなさい……」