快感と欲求が入り混じったあの気持ち。
もう一度感じたいって、今でも思ってしまう。
とはいえ、本番中に声が出なくなった恐怖も同じくらい、いや、それ以上に強くて。
私は前に進めなくなっている。
でも……
珀ちゃんに甘えたら、私は前に進めるのかな?
辛いことがあっても珀ちゃんに守ってもらえると思えば、恐怖心と戦えるのかな?
「珀ちゃんありがとう。司会のこと、もう一度考えてみる」
無言のまま、私の頭を優しく撫でてくれた珀ちゃん。
珀ちゃんの表情が、見たこともないくらい穏やかで。
私の心の傷を優しく塞いでくれるような笑顔に、胸が少しだけキュンと弾んだのがわかった。