「まっいいや。ありがと翔真!大事にするな!」

改めて振り向いてお礼を伝えた時、

未茉を真っ直ぐに見つめる翔真の真剣な眼差しに吸い込まれそうになった。


隣で触れ合っていた手を絡ませてきたのがまるで合図のように、目が一瞬合うと、もう翔真の長い睫毛がゆっくりと閉じたのが分かるくらい、

「!」
数センチの距離にまで顔を近づけてきて、とっさに顔を背けるように俯くと、おでこに軽いキスを残した。


そんな柔らかい唇がゆっくりと離れてくと、未茉は一気に熱くなる自分のおでこに手で触れたまま、覗きこむように見つめてくる翔真を恐る恐る見上げると、


「…今、半分受け入れ体勢だったよね?」

てっきりまた殴られるかと思っていた翔真は嬉しさ半分、意地悪半分で確かめるように聞いた。


「悪女かもしれない……」

「は・・・?」

思いもよらない未茉の返しに目が点になる。


「やっぱりあの後輩達の言う通りあたしは男を惑わし、弄ぶ悪女なのかもしれない・・。」

「えっ?なに悪女!?」
その飛び出した思いがけぬワードに翔真も耳を疑った。

「そうだ……悪女だ……」
今までにない妙な感情が心に流れ体温を上げてく自分が自分で恐ろしくなってきた未茉だったが、きっとそうなんだと妙に納得がいった。

(だって翔真の体に触れると落ち着き安心して、こんなに下心の塊の男の行為を平然と受け入れてしまうなんて……)

「し…知らなかった自分がこんなにハレンチな女だとは・・・」

(うん。なんかまた変な方向へ一人で向かってるんだな・・)
がっくりとショックを受ける未茉を翔真は苦笑いしながら手を引っ張り、

「じゃ、16才、悪女白石未茉さんの誕生に改めて乾杯しますか?」

「!!悪女じゃねぇっ!!」
「悪女だって自分で言ったじゃん。」

悪女未茉を歓迎するかのようにニヤと微笑む翔真の目つきがいつも以上にいやらしく見え、結局未茉に叩かれるのであった。