「よしっ!軽井沢行くぞっ!!」

昼休み体育館には行かずに明後日の追試の為に未茉は担任から貰った問題集を広げて図書室で勉強を始めた。

「静かにしてください。」
見張りの図書委員に怒られて「すみません……」と教科書を立てて顔を隠すように謝る。

「ん~…」

本を片手に「ん~…」を繰り返し、首を横に傾げる。


「分かんねぇー・・・」

意気込みも空しく、開始五分で机に顔をつけて、教科書は頭の上に置き、唇の鼻の間にシャーペンを乗っけてるうちに瞼が重くなる。

(ワカラナイワカラナイワカラ…………ぐうっ……)

冷房が効いて静かな図書室は、一瞬にして寝落ちを誘う環境であった。



「見つけた。」

頭に被ってた教科書を取り、寝落ちする未茉を確認したのは図書室に探しにやってきた翔真だった。

「おーい。起きて。」

手を伸ばし、クシャッと未茉の髪をかきあげると、眉が下がり静かに気持ちよさそうに寝息を立てる表情がなんとも今更ながら可愛かった。

「うーん。起こさない方がいいんだろうな……」
(それに起きたら接近できないしなぁ…)

悩ましく見つめれば見つめる程に……
後から後から込み上げるように愛しさからくる触れたさの葛藤から、無意識に指は頬を擽るように触れ、睫毛を擽るように触れてく。

「ん……」

その動作に未茉がピクッと反応するとその指も動きが止まる。
‘やれやれ’と理性を正し、ため息ついた翔真は問題集を手に取り、シャーペンを握った。