「先輩と初めて勝負した時、俺一本も取れなかったです。」

「あの頃、お前のディフェンス隙だらけで相手にならなかったぜ」

リング前で禅のシュートタイミングを待つ未茉を見つめながら背後でゆっくりボールを隠すようにドリブルを始める。

「日に日に成長してく禅を見てこんなに成長の早いプレーヤーは見たことないって思ってたけど違うね。」
「……」
「いつも口ではすかしたこと言ってんのに、あんなに努力を惜しまないプレーヤーは未だに禅と健兄以外見たことないよ。」


「俺、女で敵わない女は先輩以外いないです。」


ーーーパッシュ!
「あっ!!」
サイドラインまで下がり禅はリングへとボールを放りこんだ。



中学時代、何百回何千回未茉に勝負を挑んできた。
負け知らずできたはずなのに、毎日ボロ負けして悔し涙を流してきた。そんな禅を見て、

‘落ち込んでる暇あったら練習しろよ。’

いつも未茉はボールを投げて微笑むその才能に溺れない誰よりもストイックに練習に励む彼女に尊敬と憧れと恋心、

初めての感情が芽生えたーー。

あの日からプライドと共に秘めた才能は努力によって開花していった。



「この野郎…!!」
女相手だからといって手加減せずゴールに向かって果敢にアタックしてシュートを決めてく禅。
だが、未茉にとってはそれが嬉しく、胸を熱くさせた。


「レベル高ッ・・・・。すっげぇ東条だっけ?」
「東条って全国二位の王子中のエースだよな。」
圧巻のプレーに驚く結城と三上が絶句してると、

「俺…白石に1on1勝てねーのに・・・」
「俺も・・・。」
その隣では未茉と対格差10センチもない男バス部員達は顔を見合わせて焦った。
「俺らなんてきっと歯もたたないな・・・。」
勝負の見えた勝負に苦笑いする。