「アイツ・・マジ一発ぶん殴りてぇ・・。」
我慢にならない翔真はもう怒りの絶頂へと差し掛かっていた。

「白石~~!!そんな中坊黙らせよ~~!」
何も知らない男子バスの野次に翔真だけは顔色が青ざめてゆく。


「つーかさ、この勝負にあたしが勝ったらさっきの女の子達に禅、謝れよ。」
バッシュの紐をきつく結び直しながら未茉はそう提案した。

「え?」

「そんでまぁ、なんかうまいことフォローしといてよ。同中だしさ。このまま気まずいのはダメだろ。」
「俺にあの子ら一発抱けということですか?」

「バカか・・・。そういうことしか脳がねぇのかよ。お前は。話聞いてアドバイスしてやれってことだよ。あたしがしたって話ややこしくなりそうだし。」

「まあ、俺が勝つからなんでもいいですよ。」

「・・・・。」




「じゃ行くか禅。」

スイッチの入った未茉に禅は静かに頷くと、ドリブルを始める未茉にすぐさま身を寄せるが、

「!!」
駆け引きもフェイクもなく未茉は得意のスピードに乗ったドリブルでリングへボールを放り込み、

「まず一本♪」

「…相変わらず早いですね。」
「だろ?」

どや顔をする未茉と久々にマッチアップして、禅はその凄さをまた痛感した。男子でもこんなドライブ決める奴は同世代でもいない。


……スピードとテクニックは抜群に自分より上で、正直彼女よりも才能を秘めた存在にあったことはない。

中一の時、初めて彼女の鮮やかなプレーを見た時、鳥肌と衝撃を受けた。

王子中の男バスの誰も彼女に歯が立たなかった。


‘勝負して貰えますか?’
東条禅は、初めて女に勝負を挑んだ。女とか男じゃない。そのくらいの価値あるプレーヤーだと思ったからだ。