「あれ?白石はまた練習か?」
「ああ、練習に行ってたぞ。っーかアイツは勉強しなくていいのか・・・。」

-ーキュッキュッ…

教室からのそんな声も知らず昼休みに自主練にきた未茉は、一人黙々と誰もいない体育館でバッシュ音を響かせて練習をしていた。

「……はぁ…」
目を閉じながら仮想していたのは大成との決勝戦だった。

浮き彫りになった自分の欠点に向き合いながら、
‘もっとこうだったら’‘もっともっと’を繰り返しながら納得いくまで同じ動きを繰り返してく。


そんなもどかしさを晴らすように、いつもよりも調子の上がっていく彼女のキレの良さに、
「……」
練習しようと体育館に来ていた新キャプテンの前原も引き込まれそうになるほど眺めていた。

そしてもう一人、そんなストイックな未茉を体育館の別入り口で眺めていた人物の視線に気づいた。


「……はぁはぁ……え…禅……?」

両膝に手をつき、息を整えながら顔をあげると、


「こんにちは。先輩」

つい数ヵ月前まで着ていた懐かしい中学の制服姿で太陽が差し込む体育館の扉に寄りかかりながら禅は未茉に軽く頭を下げる。