「なんだよーもぉ~~!!!!莉穂達と全然話せなかったじゃんっ!!」

野村監督に見つかり会場の外へ一目散にダッシュをし逃げてきた未茉と翔真。

「ま、勝ったとこが見れたからよかったんじゃない?」
「そぉーだけどさぁ。」
「これ以上長くいると未茉ちゃんの身が危ないし俺の均衡も保てないしね。」
「は?」
「ううん。」
こっちの話と翔真はにっこりと微笑む。


「あっちぃー夏だなぁ…」
駅へと続く帰り道、まとわりつくような湿気と蝉の鳴き声と強く照りつける地面太陽の日差しを疎ましそうに空を見上げ少し悩んでたことを思い出した。

「実はさ、ちょっと自分の中でイラついてたことがあってさ。」

一瞬行き詰まった顔を浮かべた表情を見せた未茉に翔真の足は止まった。
ようやく話してくれると思ったからだ。


「高校はよ、どっかの地方の強豪校に行くより、明徳を選んだことは本当に後悔してないんだ。パパとママや和希瑞希のいる家にいたかったし。」

「うん。」

「明徳でBIG3やキタローにも会えて、最初は色々あったけど今のチームメイトに出会えて一緒にプレーできたこと本当に嬉しいし、後悔なんかないんだけど、この前嵐に」


『全国に行けなくて幸せ?お前本気で言ってんの?』


「そう言われて確かに‘幸せ’って口にした自分に正直、すげー違和感があった。昔から一緒に最強目指してやって来たから距離を離されたことにもしかしたらちょっと焦りとかあったかもしんない。」

遠くの駅前の聳える広告塔にスポーツシューズCMの嵐の一面のポスターを未茉は見上げた。