「お、お疲れさん。」
ベンチに戻ってきた東条に翔真は労いの言葉をかけると、
「ああ、来てたんですか?見えなかったです。」
「俺の方が二十cmもでかいけど?」
見下ろすようにその嫌みに対抗すると、見上げた禅はピキ・・と額の血管を切らす。


「あっ!禅っ!!よぉっ!!お疲れっ!!さっすがじゃーん!!」
「禅!よくやったね!さすが我弟!」
未茉と莉穂は労いながら禅にタックルすると、
「ほら、先輩。」
禅は両手を広げ未茉へ‘おいで!’と目で訴えてくる。

「こら!調子に乗んな。」

ゴツンッ!と翔真は禅の頭を叩く。

「なんやかわいそうなやっちゃっなぁ~うちの胸に飛び込んで来いやチビ禅。可愛がったるでー!」

それを見ていた静香が仕方ないなぁ~とまんざらでもなさそうにクイクイッと手招きしながら両手を広げるも、

「いや、いいです。」
プイッとそっぽを向かれる。
「なんや遠慮せぇへんと」
「遠慮はこれっぽちもしてません。」
「照れんなや。いくらうちの胸が豊満やからって。」
「胸の問題じゃない。」
「あ?」
「胸は先輩みたいにぺちゃんこでいい。」

「ぺっ・・?!てめぇ今なんっつった?!」
そこへ聞き捨てならないと未茉は額をピクピクさせながら切れ禅を静香と一緒に追いかけ回す。

「あ、莉穂さぁーんっ!!僕の逆転シュート見てくれましたぁ!?」
そこへ無邪気な顔をした和希が莉穂の元へやってくると、

「見た見た!偉いね。和希かっこよかったよ。」
なに食わぬ顔でギュッと抱きつく下心満載な和希とはつゆ知らず莉穂は抱き返す。
「二階堂先輩と別れたなら俺どうですか!?俺なら高校行っても間違いなくスタメンっすよ!!」

(うーん。和希君の方が一枚も二枚も上手だなぁ・・・。)

ちゃっかりアピールしている和希を見て翔真は苦笑いしながらまた見ていると、
「み・な・とぉぉお~~~~」
背後から恐ろしい声と悪寒と共に振り向くと

「あ、やべぇ。」
「やべぇ、じゃねーだろっ!!部活サボってここで何をしてやがるー!!!」
野村監督からの雷を落とされ、翔真も一目散に走り未茉を連れ逃げたのであった。