「お、なんか息を吹き返したな。」

試合が再開されると、敵に塩を送ったことを後悔しながら隣に戻ってきた未茉に翔真がメンバーの表情を見ながらそう言うと、

「莉穂もこんな祈るような気持ちで見てたのかな。」
「ん?」
「一年前の全中の決勝戦、相手チームが去年全国ベスト4のかなりの強豪で試合開始からすでに攻めあぐっていてもうボロ負けするんじゃないかっていう嫌な空気を払拭できずにいてスタンドの莉穂が急に何もできなくてごめん。って泣き出してやってきてさ、」

王子中のユニフォームを来てプレーする禅達に一年前の自分を重ねながら話した。

「莉穂は三年のレギュラーチームから外れてから、あたしのペアの相手をずっとやってきてくれたんだ。練習の後もずっとあたしが帰るまで居残りしてくれてよ。自分も試合出てぇだろうに文句も愚痴もひとつも溢さず付き合ってくれたんだ。」

「へぇ…」
「しかもアイツがすげーのは、その後にまた自分の練習を始めんだよ。レギュラーチームに入れるようによ。」

翔真は優しい目で未茉の話にそっと耳を傾けながら聞いていた。

「莉穂が自分も立ちたかったはずのコートの上であたしを思って泣いてくれた時、自分の気持ち以上にあたし達を想ってくれてる莉穂に何も返せてないって自分が許せなかった。」

「…」
「あの時、自分の中学校バスケでの全ての思いをあたしに託してペアになってくれていた莉穂と共に絶対に一緒に全国に行こうと決心した。」


(莉穂を泣かせるためにペアを組んでたわけじゃない。莉穂にあたしのペアを組んでよかったと思われるくれぇのプレーをあたしはしなきゃなんねぇだろ!!)

自分を奮い立たせた未茉はもう一度顔を上げてコートに戻っていった。