「「世田中!!!オッオッオー!!!」」
強豪世田中の応援歌も響き渡り、どんどん点差は開いていき、王子中もメインの選手の一人がファウルアウトになってしまい、運動量も一気に増え悪条件が続いてしまった。

「クソ……」
コートに立つ王子中の選手も雰囲気に飲まれて足が重くなっていく中、向かえた最終インターバル。

背番号四番ーーー。いつも強気の禅の背中がベンチで丸く見えた。

「禅っ!!!」
「……」
はぁはぁと息を切らしながら、彼は振り向いた。



「中三の夏だぜ!?禅!!これが最後の夏だろ!?」

投げ掛けた未茉のその言葉にベンチに座る選手も顔をあげた。

「これで終わりだぜ!?こんなんでおわんのか!?終われねぇーだろ?!!」


「先輩…」
ベンチから立ち上がり彼女の元へ駆け寄る禅はギュッと未茉の存在を確かめるように両腕で抱き締めた。

「「ぎゃああああっ!!!いやぁああああっ!!!」」
彼女達の悲鳴もおかまいなしに禅は未茉を抱きしめた後、気持ちを切り替えたようにゆっくり体を離して

「奇跡は……」
禅は小さな声で呟いた。
「?」
「奇跡は最後まで諦めなかった奴だけが起こすんですよね。」
いつもよりも鋭い眼差しで真っ直ぐゴールを見上げながら言い放ち、タオルをベンチに投げてコートに戻ってく。

「……!」

去年の総体の決勝で、自分が仲間に言った言葉。
「俺もあの言葉大好きです。」
「俺もっす。」
「先輩のプレーも言葉も俺らの勇気にも力にもなりました!」
最終Q開始五秒前、後輩達が未茉にそう力強く言いながら次々にコートに戻ってく。

「俺、姉ちゃんを越えるから。」
最後に和希がそうぶっきらぼうに言いコートに戻り、
「100年はえーわっ!この野郎」
その後ろ姿に未茉は足蹴りすると、
「いってぇ!!」
疲れからベシャッと体ごとコートに倒れ顔面を打ち付ける・・・。