「翔真!?」
「焦った・・・マジ。」
「試合以外全力で走んない男がよく来たな。」
「・・・。」
人の気も知らないその言い草に珍しくムッとする翔真を見て未茉は思わず

「あははっ!怒った!!うそうそわりー。助かったわ!」

昨日は全く見せなかったいつもの太陽のような笑顔に翔真は安堵した。

「……誘拐されたかと思った。」
「誘拐?誰に」
「東条。」
「なんで」
「・・・。」
「?」
きょとんとした顔で見上げる反則の彼女の可愛さとじれったさに思わず頭部に手を回し、誰にもその顔を見せないように自分の胸に閉じ込めるように抱き寄せ、

「俺以外の男について行かないで。」

息を切らす顎を未茉の頭にちょこんと乗せて、珍しく強引な言葉を自分でもらしくないと分かっていながらも口にした。

「行かないよ。」
はやる翔真の鼓動に包まれながらきっぱりそう答えると、
「お、珍しく素直で嬉しい返し。」
「別に誰にもついて行かない。」
ツーンッとそっぽを向く未茉にガーーンッ!とショックを受ける翔真に

「お前がついてくんだろっ!あたしの男ならっ!!」
「ああ…。そうでした。」
「そこんとこ忘れんな。」
「あははっ!はい。」

少し屈ませて嬉しそうに笑う翔真を見てきゅぅっと締め付けられるような胸を押さえ、
「あ、なんか…」
「ん?」
「なんかこー心の中のモヤがスーッと晴れてきた。」
「ん?モヤってたの?」

「だいぶ。お前って凄いんだな。」
「未茉ちゃんの方が凄いよ。」
「まーそうだろうな。」
「・・・・」