「いや、この路線であってますよ。」
スマホのGPS機能から路線を確認して座席に座り偉そうに足を組む禅は、

「今日の東京予選決勝、俺が勝つとこ見たいでしょ?」
「そりゃ見たいけど」
「じゃ着いて来てください。」

「でもあたし部活最近遅刻しまくってさすがに」
「勝ったら先輩を好きにしてもいいですか?」
「は・・?」

「例えばその小ぶりな胸をこの指と口でああしたりこうしたり」
電車の中でとんでもない言葉を発する禅を居合わせた客達が真っ赤な顔で振り返るので、未茉がごん!!と叩きのめす・・。


「あっ!!未茉ちゃんっ!!!」

ちょうど通過駅で逆側の高校へと向かう電車から何やらキレている彼女を乗せた電車をたまたま窓の外を眺めていた翔真は発見して、
「え、白石?」
同じ車内にいた結城と三上も気づき、
「なんで逆電に乗ってるんだ?」

「未茉ちゃんっ!!」

思わず向かい合う同じ車両まで走り翔真は窓を叩いた。
ドンドンドンッ!!
「ん?」
その不思議な振動に気づき、未茉は振り向くと、

「翔真ぁっ!?」

未茉が驚いて車内の窓を開けると、
「あ、湊先輩。」
禅もその呼び声に気づき、振り返ると

「ゲッ!なんで東条と…」
嫌な顔しながら翔真も急いで電車の窓を開け、
「どこいくの?!部活は?」
「禅に無理矢理……」と言いかけた時、

ーーガチャンっ!!
と勢いよく遮断するように窓を禅が閉めると、未茉の体を抱き寄せて翔真に宣戦布告のような笑みを浮かべる。
「「なっ……!」」
と言いかけた二人の声も虚しく、電車はすれ違いに逆方向へ走り出した。